視点・論点

NHK教育テレビの『視点・論点』。ゆうべは、荒川洋治さんの「聞こえる言葉」。前回の登場が去年の11月5日(題は「労働者の文学」)だったから、ほぼ半年ぶり。
この番組は、出演者がガイド誌などで予告されていない。番組のさいごで次の回(あした、もしくは来週の月曜)を紹介するだけ。たぶんかなり先まで予定は決まっているはずなのに(『テレフォン・ショッキング』みたい?)。だから、うっかりしていると見逃してしまうので毎回欠かさず録画するようにしている。
お話は、だいたいこんな感じだった。
電車に乗っていたら、3人の20歳くらいの青年が野球の話をしていた。3人とも、とても詳しい。話のスピード・流れは見事なもの。3人の言葉の量のバランスも絶妙。近くで聞いていて楽しかった。降りる駅に着いてしまったので5分くらいの出来事だったが、いつまでも聞いていたい、そんな楽しい気持ちになった。
ふと聞こえる言葉、ひとが話している光景はいいもの。生身の人間がそこで話している。目のまえで話されていると、同じ知るのでも(新聞やテレビとちがって)空気や事実をたしかめることができる。
スタインベックの『ハツカネズミと人間』のあらすじを紹介(画面には新潮文庫版の表紙がアップで)。なかにこんな一節がある、と黒人クルックスのセリフを読みあげる。「一人の男が別の男に話をしていて、相手が聞いていまいが理解していまいが違いはねえ」「どんな話でもかまわねえ。ただ話をしているだけで、相手といっしょにいるだけでいい」
先日、たまたま見た民放の番組のこと。途中からなので詳しく再現できないが、30代の男性タレントと10代のモデル・女優のふたりが著名な映画監督AさんとBさんに話を聞きに行くという内容。訪ねるふたりは両監督について知識がほとんどない。どうも、こういう企画のようだ。簡単に番組を再現。それにしても失礼だと思ってテレビを消したくなりつつ、気になるので見つづけた。もし、ふたりの監督がしっかりした番組で話をしていたら、僕はこれほど熱心に耳を傾けただろうか?この番組にも、ひとが話をする、ひとがそれを聞く、というひとつのかたちが示されていることに気づいた。
ひととひとの話がつくりだす世界はとても多様なもの。そこにはこの時代を素直にあらわすものがある。ふと聞こえてくる言葉からも、おおくのことがらが聞こえてくる。
最初の電車内の話には、選手名鑑のことも出てきて『週刊朝日』の書評と一部重複する(前回の労働文学のことといい、前々回の新聞のスクラップの話といい、いつものことではありますが)。スタインベックの小説は『考える人』のアンケートで「海外の長篇小説ベスト10」のひとつにも挙げられていたけれど、今回も絶賛していた(「名作」「感動的な作品」)。上の引用は99ページ。
民放の番組は、紳助のものかな? 調べればすぐにわかると思うけれど、関心がないのでわからないまま。
ところで、荒川洋治さんは天津木村に似てる。あると思います。